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2015.08.14

時を越え、勇気をくれるうた

 長野県駒ヶ根市を舞台に1975年から活動しているアルプス子ども会は、民営キャンプ団体の草分けで、これまでに日本全国や海外から延べ約11万名の子どもたちが参加してきました。その大きな特色の一つに、行事や環境と密接に結びついたオリジナルソングの存在が挙げられます。
 幼児から社会人までのメンバーは集合してから解散するまで、一日を見れば朝の集いから就寝前のプログラムまで、うたと共に生活を展開すると言っても過言ではありません。40年間に創られてきた曲数は100以上、他団体に広がった『地球のまん中』は1982年夏のテーマソングでした。その内80曲くらいは今も歌い継がれ、毎年新曲が発表されています。現在までカセットテープ5巻とCD4枚を作って計数千本を頒布、公式ウェブサイトには「ネット歌集」を設けました。バリエーションも豊かで、直前のフレーズを繰り返す「後付きうた」や楽しい踊りとセットになった「振り付きうた」、フォーク調、ニューミュージック調、Jポップ調に沖縄民謡調まであります(演歌調は未だ無い)。
 そうして、普段家では歌うことなど全く無い子どもたちまでもが、帰宅後に歌い踊りまくって、親が驚かされるといった話を毎年のように耳にします。それはなぜなのでしょうか。
 一つは、歌詞の内容がまさに自らの体験に根差していることです。親と離れて頑張った自負、新しい友達ができた喜び、力を合わせて困難を克服した達成感、仲間と別れる悲しさなどなど、心を揺るがせた経験をメロディーに乗せることで、さらには同じ時間と空間を過ごした仲間と一緒に奏でることで深い一体感を伴いながら、「いつもと違う特別な日々」が一層強化されます。
 そして、日常の暮らしの中で、特にいやなことやつらいことに遭遇した際、あるいは壁に直面した時に、それらが思い出されます。そうです、勇気・元気・やる気、少し大げさに聞こえるかも知れませんが、難局を打ち破る力を与えてくれさえするのです。
『ゆうやけ』(作・広越たかし)といううたの中に
 ♪赤く 赤く 君のほほをそめて
 赤く 赤く 炎はもえあがる
 明日は見知らぬ 自分と出会う
 今日に告げる さよならをもやして
という歌詞があるのですが、キャンプから何年も経ったある日、部活の試合に敗れてふと口をついて出た瞬間に、四番まである曲の核心がこの三番にあったのかと、気づくことだってある訳です。
 さて、家で子どもたちが聞かせたうたは家族に広がり、親や弟妹にも伝わります。やがて子は親となり、自らの子を参加させて一緒に同じうたを歌うと、世代を越えて思いがけず生じる「体験の共有」。白い雲が浮かぶ空の青や森の濃緑、他の子やリーダーたちとのやり取り、キャンプファイヤーや川遊びの興奮、初めて目にした生き物への驚き……思い出はうたと共に鮮やかに蘇ります。今の子にとっては父母を参加させた祖父母から三代が声を合わせることもあるでしょう。
 長く多く歌い継がれるのは、やはり洗練された歌詞とメロディーの曲で、歌う時間を盛り上げるにはそれなりの仕掛けが必要です。歌詞コールや歌詞幕はもちろん、ギターやアコーディオン伴奏、リズム楽器の他に、みんなの心をまとめる手拍子が大変重要になります。抑揚をつけることも忘れずに。
 今後の課題としては、音楽教育の衰退とも強い関係があると考えますが、アップテンポのものばかりが好まれ、静かでゆったりとした曲がなかなか受け入れられないこと、ハーモニーが総じて下手になっていることを掲げておきます。
 これからも大勢で歌う時間を大切にして、キャンプソングを楽しみ続けましょう。
(日本キャンプ協会機関誌『CAMPING』特集「キャンプとうた」依頼稿)
[PDF版はこちら]

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