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2005.09.27

全小学生になぜ英語教育が必要なのか

 小学生の娘に、今年もまた英語の「授業」が始まります。二学期から三学期にかけて、7時間。授業時数ですので正確には5時間15分。もちろん遊び程度の英語に触れるだけのものです。
 ゆとり教育が叫ばれたり学力低下の危機感から競争復活の兆しがあったりと混迷を極める教育行政の中で、この英語教育についても非常に大きい疑問が横たわります。限られた授業時数の中で、だれが、一体なぜ日本中の全小学生に英語を教えようとするのでしょうか。
 先に私の英語力を明らかにしておくと、英語をしゃべれるとは全く言えませんし、さりとて外国人に英語で道を尋ねられれば、答えようと努力する程度の英語は口にできます。英語圏から子ども会に来る子どもたちに「私がマネージャーだから何か困ったことがあったら言ってくれ」と言葉がけすることくらいはできます。言わずもがな中学1年から大学2年まで英語を習ったからです。海外旅行をすれば必ず「日常会話くらいできたら良いのに」とか「帰ったらNOVAに通いたい」と思いますが、レストランやバーでは生の異文化に触れたいがために、大学受験で培った多少の単語力を駆使して隣席の欧米人に話しかけてしまいます。ただし、大学で私に英会話を教えた教師が発音に厳しい英国紳士で、私はlとrの区別やthにこだわった授業を受けたために発音だけは若干良いらしい。それでうっかり話そうものなら、ペラペラペラと普通にしゃべられて何も聞き取れないという有様です。
 さて、本当はここに吠えたところで何の実効も無いのですが、「毎年7コマ」はひどすぎると思いますので、稿を分けて少し丁寧に考えます。
 まず、そもそも語学は薄く長くやるよりも短期間に大量に学んだ方が身に付くことは多くの専門家が指摘しており、もはや常識に近いでしょう。今の英語「教育」が単なる英語に親しむだけのお遊びになっていることは英語教育推進論者も認めるはずです。しかも、多くの小学校では英語の授業に実際は総合学習の時間が充てられている訳です。それでなくても、学校による格差が激しく、意欲のない学校では1・2年生の生活科と内容が大差無いという批判の絶えない「総合」は、その「お遊び」のためにますます骨抜きになっているのではないでしょうか。
 薄く長く接した英語は全く身に付くことなく、どこかに消えて行くのは当然です。「小学校で少しやってきただけあって最近中学校の英語のレベルが上がった」という話は聞いたこともありません。私が見聞きするのは、特に近年、子どもたちの(日本語での)コミュニケーションがおかしくなってきていることの方です。
 平易な日本語で尋ねてもこちらが聞いていることに答えられない、会話が成り立たない、指示をなかなか理解できない……。そうした「普通の」子どもが増えていることを実感している私としては、小学生に英会話を教える暇が少しでもあるのなら、日本語会話の授業を受けさせることこそ急務だと思えます。もしも、お遊び英語をやるその時間に日本語会話をやっていれば、まだ少しは、しかし必ず、彼らの真っ当な育ちの助けとなることでしょう。
 したがって、仮に小学校の授業時間が余り気味で総合学習を割かずにできたとしても、英語が無いよりは有った方が良いかと言えば、決してそんなことはありません。ましてや、今の状況が全小学生に学ばせる本格的な教科としての「英語」あるいは「英会話」へ移行させるための位置づけだとすれば、愚行極まりないと考えます。

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コメント

ブログで、お子さんの小学校での英語教育の記事を読ませていただきました。
私は、YMCAで4年ほど、小学生に英語を教えたことがあります。
現在は、大人にTOEICなどを教えております。

確かに、小学校での英語教育にはいろいろ難しい問題があると思います。

私も以前は、日本語やその他の勉強の方が大事だと思いましたが、子供には
意外に大きなキャパシティがあるのではないかと思い、考えが変わりました。

英語を小学校で教えることについてのバックグラウンドになるものは、臨界期仮説といって、応用言語学で、第二言語習得に、年齢が早ければ早い方がよいといった仮説があるからだと思います。これは仮説ですし、現在の研究によると、必ずしもそうであるとは結論づけられていないようです。

「英語を勉強する」のではなく、「英語に触れる」機会をなるべく早くから持つことは悪いことではないと思います。ですが、小学生に英語を教えるのは非常に難しく、技術が必要ですし、教え方をよく考える必要があります。また、中学での英語学習にどのように結びつけていけばよいかという問題もあります。このような問題を解決せずに、小学校で英語を教科にしていくのは難しいのではないかと思います。

総合的学力の低下などの問題もあり、小学生のお子さんをお持ちの方は悩まれることとお察しいたします。

投稿: blue3trees | 2005.10.04 11:48

コメント、仮説のご紹介ありがとうございます。参考になります。「小学生に英語を教えるのは非常に難しく、技術が必要」とのことですが、小学校で英語を教えられる(しかも英文科の学生でも難なく取れる)資格をつくる動きがあると聞きます。質の低い「英語教員」が入ってくればますます不安や不満が高まるでしょうし、他方最近は国語の読み書き重視傾向もありますので、先行き不透明ですね。

投稿: 綾崎 | 2005.10.05 00:58

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